ラスト・ラバーズ

−方舟が辿り着く時、必ず君にまた逢えるから… 永遠の約束が、時を越え叶うと信じてる−

review

2014/04/13 -- Yuy@(Yuy_H)


はじめに

 まずは、本アルバムをお手にとって頂き、真にありがとうございました。

  以下、アルバムを買ってくださった方向けに、興味があるかどうかよく判らない漫然とした文章を記載することで、少しでも購入した時の欲求を満たして貰おう と思います。アルバムを聴く前に読んでもなにがなにやら(聴いた後でもなにがなにやら)だと思いますので、そんな感じで緩く読んでもらえれば幸いです。

 朝のコンビニでレシート箱に入れられていくレシートぐらい要らない話だと思いますが、このアルバムを製作している間、天下一品(ラーメン)の白飯定食を60回位は食べています。60回というとなんかやたら多く思えますが、週1、2回なので、そこまで多くはないと思っています。影のスペシャルサンクスは天下一品といっても過言ではなく、所謂ソウルフードという奴ですね。天下一品を食べないといい音楽は書けないという学説が、10年後に主流になることをクロスホエンから祈っております。

 さて、アルバムについて言及しますと、今回は12曲(前回(クロス・ホエン)も12曲)ですが、特段12曲というところに拘りがあったというわけではなく、やりたいことの内容を表現するためには、この位の曲数が必要だった、という感じです。

  今回のアルバムでは「約束の方舟」という曲が全体の鍵になっています。歌詞を見ていただけると判ると思うのですが、SFジュブナイル(の要素を持たせてい ます。アルバム全体を俯瞰してみてみると、少女の二重人格性とそこに対しての「君」との状況の配置でストーリーが動いていく、というイメージで曲を配置を しています。ゼロ年代に「セカイ系」という概念(起源については色々諸説あるようなのでそこには言及しません)が言われるようになった、と思うのですが、 このアルバムもまさにそんなイメージで作っています。(ちなみに私のセカイ系の代表的なイメージは空の境界、最終兵器彼女等です。)

 既に察しの良い方はお気づきだと思うのですが、「約束の方舟」という曲はSF小説「約束の方舟」(瀬尾つかさ) から着想を得ています。この本を読了した後に、これを基にアルバムを作りたい!と思ったのが今回アルバムを作った主な動機です。興味がある方は是非ご一読 いただければと思います。(長いのでじっくり読むことをオススメします。)このアルバムは約束の方舟へ捧げたいと思いますが、捧げられても困っちゃうよと 思われるのは地動説並みに自明の利なので、私の中で留めておくことにします。

 いい加減駄文を読まされてうんざりしてきているところだと思うので、曲解説にいります。どうもながらくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした。ここからはゲストのKarita様の解説も入りますので、有意義なコメントを読むことが出来るコーナーになっています。


曲目

  1. 1. 雨の灯 / かづきん

      はじまりのSEと人の声はある種、さまざまな感情の発露の交差をイメージしています。これは少女の内面とリンクしている感じです。その後、ピアノとインダストリアルビートで展開させていますが、これは少女の二面性、正常な優しさと狂気を対比させている、というイメージです。
     「雨の中、傘を差さずに踊る人間がいてもいい。自由とは、そういうことだ」という某人の有名な台詞が有りますが、割とそんなイメージも有りました。

  2. 2. 孤独の残骸 / tomo

     最初に来る歌は、キャッチーに作ってアニメのOPっぽいような感じでスタートさせようと思って作りました。アルバムにおける、少女の最初の状態のイメージでかつ、全体の中での少女のイメージを曲に反映しています。心象風景と捉えてもらえれば大体あっていると思います。

  3. 3. IX / theta

      歌の表現と独特なノリが曲の個性を際立たせているような印象を受けています。言葉では明瞭しがたいナニカなのだろうと思っているのですが、この曲には感情 のうねり、みたいなものを強く感じます。人の感情が生み出すパワーはなんたらかんたらみたいな某インキュベーターさんが言っていましたが、パワーというの は「うねり」のイメージだと思っているので、その点よく表現されているのではないか、という印象です。

  4. 4. lettel / かづきん

     この曲については歌詞の表記が特殊になっています。(決して寝ぼけて間違えてワープロして入稿したということではありませんのであしからず。)作詞者の方の注釈を入れたほうが曲の流れが明確になると思いますので、以下、引用して紹介をします。

     【歌詞】
     日本語→ローマ字→引っ繰り返す形。時折英語。letter(レター/手紙)の最後の[r]が[l]になっている物。

     【タイトル】
     [まともな人格]と[狂気的な人格]の境目が無い、という意味でアンビグラムや回文の様な見た目にしたかったので、最後は[l]に。
     徐々に記憶や動力を失う少女が最後に書いた貴方への手紙。[Lette(英語)]は女性名で喜び、幸せという意味があり、辛く悲しい運命だけど貴方を愛した事は幸せでした、みたいな。また[lettet(動詞:lette/ノルウェー語)]は[relieved(安心した、解放された/英語)]という意味があるので、狂気的な人格に悩まされる日々から(自我を手放す事で苦痛から)解放される狂気的な人格に施された呪縛や鎖から(表の人格を乗っ取る事で)解放されるという2つの意味を持ち合わせていたりもします。
     「lettel」の最後の[l]部分は、湖の名につける記号の[L](Lake)から。湖と海の概念の区分が明確で無い事から、境目が無い事に引っ掛けて。少女(=美しい湖/美しい湖は宝石に例えられる事もある様です)の奥底に潜む目に見えない影(湖底に怪物が住んでいたり沈められた街があるという伝説があるとの事)という様な意味でも使用しています。

     【祖筋】
     少女はたまに[狂気的な人格]が表に出て来る事で病院の様な場所で周囲から隔離されている存在。
     外の世界(窓の外)で生きる[貴方]が少女に気付き、ばれない様にこっそり窓越しで会話する日が続く。徐々に惹かれ合うも[狂気的な人格]の力が徐々に強くなり、いずれ力を抑える事が出来なくなると感じた少女は[貴方]が気付いてくれると信じて最後の手紙を。
     やがて[狂気的な人格]に少女の全てを奪われ、そうと知らずに今日も部屋の窓越しへ訪れる[貴方]。嘗ての[まともな人格]も今の[狂気的な人格]も元は同じ少女、故に昨日までとは違う[狂気的な人格]であっても優しく接する[貴方]に少女は嫉妬に狂い何度も愛を求める。ナイフ片手に指へ、足へ、顔へ身体へ傷付けながら[貴方]を全て独り占めする為に自分だけの印を刻む。血に染まり身体が冷たく動かなくなっても[まともな人格]であったただ1人の少女を想い続ける[貴方]。何処か遠くを見つめる姿にただ只管繰り返し愛を求める。少女の血と涙で手紙を濡らしながら。

  5. 5. Photon / 沙羅

     プログレがいきなりきたー!というのが私の第一印象でした。実際に歌おうとするとかなり難しい(特にノリが)ので、よく歌えるなぁとなんだか他人事のように思っていました←。どことなく、切望、願望のようなものを感じます。歌もそうだけど、何事にも熱くなれよ!!!(誰

  6. 6. Night ballade

     物語がさらに展開する前のインタールードみたいなものをイメージして書きました。重い曲が好きではあるんですが、こういう落ち着いて聴ける感じの曲も好きなので、一曲書いてみた、というところです。ところで、サックスってエロいと思うのは私だけでは無いはずです。

  7. 7. 世界の終わりとワンダーランド / tomo

     村上春樹ですね、はい。端的に言ってしまえばそれだけなんですが、読んだことの無い人はこれに似たタイトルの著作があるので読んでみると良いと思います。私的に、歌詞についてはアルバムの中で一番好みだったりします。少女って良いですね(何

  8. 8. 星の欠片 / 沙羅

     少女=恋愛!!!みたいな事を思う20代男性はそれこそ渋谷駅の駅前にたむろしている人たちなみに、うじゃうじゃいると思うのですが、そんな気持ちで書いています。想像上の甘酸っぱさを落とし込んだので幾分過分に摂取すると拒否反応が出る可能性があるので用法用量は自己で管理の上、お使いください。
     アルバム全体を通してみると、時間軸的にみればここで初めて恋愛的なストレートなデート(少なくとも少女にとっては)をしている場面になります。気持ちを伝えたいけど本を読みたいから貸してくださいが精一杯みたいな、そんないじましい感じです。

  9. 9. ダブル / かづきん

     「セカイは、ぼくを、ぼくがそうありたいようには決してさせてくれない」(「セカイ、蛮族、ぼく。」伊藤計劃)という言葉がありますが、この場合は「わたし」 になります。二重人格を基に行為を行っていた少女がここで統合されていく(狂気の人格も君の事を認識する。)ような過程の中の位置づけ、というイメージで す。
      愛により殺される(今までの自分が他人により抹消される)事が幸せ、と考えるのは元来愛によって何かの作用を受けて「私」が変質してしまったから産まれる 感情と言えるのではないかと考えています。空の境界ではこの辺りは顕著に現れています。(要するに影響を受けまくっていますね、はい。)
     さて、曲についてですが、この曲はビートとベースに私が行き詰まってしまって、Karitaさんにお願いしたところ快く受けてくださって、合作という形になりました。全体的に曲としてソリッドな雰囲気を出せているのではないかと思います。

  10. 10. OracleMachine / theta

     Oracle Machine:神託機械(しんたくきかい、: oracle machine)または預言機械(よげんきかい)は、計算複雑性理論計算可能性理論における抽象機械の一種であり、決定問題の研究で使われる。チューリングマシン神託(oracle)と呼ばれるブラックボックスが付加されたものであり、そのブラックボックスは特定の決定問題を1ステップで決定可能である。チューリングマシンの停止問題のような決定不能な問題にも神託機械を想定することができる。(wikipediaより)

  11. 11. Gymnopedie No.1

     今回のアルバムでなぜ一曲、この曲を持ってきたか、という点についてですが、少女が状況の全部を受け入れられないけれど、ある程度整理をつけた、というような段階を現すのにふさわしい、と思えたからです。回想、モノローグ、みたいなイメージ。

  12. 12. 約束の方舟 / 沙羅

     最終章ばりに締めです。今年はこの曲を作れたのでもう暫く曲を作らなくても良いんじゃないかと言う位には私的に気に入っている曲です。
     二重人格の少女と私の行方は如何に!という結末を曲へ落とし込んでいるので、時間が有るときにでもジャケットの歌詞を読んで貰って想像して貰えればと思います。この曲でこのアルバムの物語は完結です。どうも今までお付き合い頂き、ありがとうございました!


あとがき

 最後になりますが、関係者の方々、作品を聴いてくださった方々、本当にありがとうございました。色々至らぬ所もあったと思いますが、今後共に良い音楽を作るために頑張っていきたいと思っていますので、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。

 それでは、また、次の作品でお会いしましょう!

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