Self Review / ◆Yuy ◆Karita

<はじめに>

 本作品をお手に取っていただき、ありがとうございます。以下、今作「Disharmony」に関わる逸話、小話、無駄話などを記していきたいと思います。自分で自分の作品にレビューをするというのは前々作「クロス・ホエン」からやっているのですが、例によってとても有益とは言いがたい、ある種読むことで時間を無駄にするような文章が展開されますので、時間を無駄にしたから精神的苦痛を負った!慰謝料をよこせ!みたいなことは言われても対応しかねますので、ご了承くださいませ。

 さて、皆様は私のソウルフードが天下一品(ラーメン)ということを既にご存知だと思うのですが(知らない?いや、事実そうなんですよ。)、つい最近、健康診断によりカロリーを抑えるよう食生活の改善命令が出まして、それ以降摂取を制限せざるを得ない状況に陥ってしまいました。まさに「生ー権力」の横暴ともいうべき事態の典型と思いますが、本作のデザインを担当してくれた方によると「天下一品を毎日のように食べていた同僚が早くに死んだ」というなんとも直接的に恐怖を煽るようなことを言うものですから、さすがの私も、健康診断の結果に動揺を隠せませんでした。一体、魂の拠り所というのはどこにあるのでしょうか?実に興味深いテーマです。
 そんなこんなで、今回も無事に出来上がりましたアルバムについて、解説を進めたいと思います。もしかしたら、お気づきになられた方も居るかもしれないのですが、今作はハヤカワSFの「スワロウテイルシリーズ」「ハーモニー」、カドカワの「BEATLESS」から着想を得ています。
 アルバム全体を通してみると、全体的にダウナーな感じになっているのですが、個人的にはSFには綺麗で研ぎ澄まされて冷たい感じのイメージが合うと思っているので、結果的にそういう曲が揃ったのかなと思います。アルバムの表題曲(タイトルチューン)が私が上記SFを読んだときのイメージが端的に現れています。もし、興味が出たら読んでみてください、曲のイメージはともかく面白いことは保障しますので(ただ、BEATLESSは長いのと少し人を選ぶので読書の体力がある人におススメです。)。前作は1人の2重人格者の視点でしたが、今作は2人の実在する少女(主人公と友達(今は敵))の視点から置いて、そこから世界を描く構成となっています。
 それでは、各曲紹介に入ろうと思います。

01 Swallowtail / 永渡

 この曲は、表題のSFがもしアニメとかになったら、こんな曲が流れていて欲しいなーという私の願望を実際の形に落とし込んだものです。後、某ガンダムに出てくる曲に感動してそれに多分に影響されたというところもあります(多分知ってる人は判るのでは無いかと思います。)。
 英詩を書いたのが実は初めてで、辞書を片手に海外の歌の歌詞等を見つつかなり悪戦苦闘しながら作詞をした覚えがあります。実際のところ、作曲した時間よりも作詞をしていた時間のほうが長かったように思います。因みにこの曲の最高音はHihiA(メルトと同じ!)となっており、本アルバムの中だと一番最高音が高い曲だったりします。因みに私も実は作詞者たるもの歌わなくてはとチャレンジしたのですが、まともに歌えませんでした。。。(ほんと永渡さんには感謝ですね!
 因みに歌詞の内容について少し解説すると、ここで歌っている視点は主人公視点になります。台詞は主人公とその友達が言っているものと解釈してもらえればと思います(単語は俯瞰者からの視点であり、別です。)
 アコギを飛鳥硝子さんにお願いしています。アコギはやっぱり生が良いですよね、いやほんと生アコギペロペロ・・・。

02 Redbox

 人類未到産物(Redbox)とは、人間以上の知性を持つ超高度AIがつくる、現時点の人類では理解できない超高度技術の産物です。 現時点では理解不能ですが、研究や理論の進歩によって人類にも将来理解できるようになるとされています。(アナログハック・オープンリソースより引用)
 この曲は、Redboxのもつ神々しさと不気味さ、禁忌のようなイメージを表現してみました。現実世界でも後、何十年かしたら超高度AIが生まれてくるのだろうかと思うと、楽しみでなりません。倫理的な面や社会的な面で解決しなければならない問題は多々あるものと思いますが、そういう未来を見てみたいですね。

03 kakophony / theta

 不快な音というと大半の人が不協和音のことだと思うだろう。しかし、不協和音とは不快な音ではなく濁った音のことである。不快な音を指すのはこのカコフォニーである。(wikipediaより)
 この曲を初めて聴いたときに、久々に音楽を聴いて衝撃を受ける感覚を思い出したのを覚えています。縦横無尽に駆け巡る電子音のビート、それに少しも負けないthetaさんの歌が見事に合わさって、切り裂くようなストリングスが一体となって、新たなポップスを描いているように感じました。(ポップスなのかどうかは疑義が残りますが、素晴らしいことに変わりないです。)
 メランコリックな中にも感情的な部分が見え隠れするのが良いですね。

04 孤独の残骸 (disharmony version) / tomo

 前作「ラスト・ラバーズ」にも同じ曲が収録されているのですが、こちらはバージョン違いということで、ドラマーのマイマイさんにドラムプログラミングをお願いして、リズムが変わっています。マイマイさんによるとマーズヴォルタを意識したということなのですが、私自身は全く気づかなかったです(駄
 改めて聞き返すと確かにいわれて見れば、というところがちょくちょくあったので、この機会にマーズヴォルタのファーストアルバム、セカンドアルバム、フォースアルバムを聞きなおしてみてみましょう!(何

05 Disharmony / 沙羅

 本アルバムの表題曲であり、製作陣の中で、聞いていると気分が滅入ってきて感傷的になってしまってヤバいと評判の曲です。実際のところ、この曲は「ハーモニー」のイメージをそのまま落とし込んだので、その辺りが上手く表現できたのかなと思っています。沙羅さんの透き通る声とサビのときに強さが見え隠れするボーカルの強弱が私的に気に入ってます。Karitaさんが足してくれたアコギとリズムも非常に良いアクセントとして機能しているように思います。
 この曲は主人公の友達の視点からの歌になります。ピアノとストリングスは世界の冷たさ、ヒットの音は記憶の残響を表しています。「ハーモニー」を読んでもらえると、多分元ネタが判ってニヤニヤできるかもしれません。(祝!アニメ映画化!)
 どうでもいいですが、映画化とかすると表紙がその映画にまつわる物に変わって再販されるのはどうにも好きになれません、やっぱり元のデザインのままで出して欲しいと思ったりするのですが、まぁ、仕方有りませんね。といっても、好きな小説が映像で観られるというのはやはり嬉しいもので、映画の完成が待ち遠しいです。

06 overflow / nayuta

 ここでアルバムの中では場面転換(後半戦突入!)をしています。物語もいよいよ佳境といったところでしょうか。最初聞いたとき、nayutaさんの声が入るところで冷気(霊気)のようなものを感じて(MONOと同じような感じ)良い意味でぞくっとしたのを覚えています。「クール」という言葉が私の語網のなかでは一番イメージが近いです。

07 My humanity / 永渡

 人間が人間たる所以はその感情にあると思っているのですが、そういった感情の発露という面と、人間の持つ儚さをイメージして作っています。歌詞は全部造語です。(俗に言う「梶浦語」を参考に作っています。)因みに、この曲も最高音はHihiAなので、歌うのは激ムズです。私のサークルの曲は歌う人に優しくないことに定評がありますが、ほんとですね(ぁ

08 One's hope (remix) / nayuta

 いつかCONさんのOne's hopeのリミックスをやりたいなと思っていたのですが、遂に念願かなってやることができました。曲のイメージ的にもこのアルバムに入るのがふさわしい(人間の持つ愛情がテーマになっていたので)ということで、入れさせていただきました。
 リミックスのイメージとしては「私は世界の果てからいつも貴方を想うよ!」という感じです。音作り自体は原曲とかなり変わっています。
 ギターがうにょうにょとディレイでなってるんですが、これはニューロン伝達のようなイメージ、意思が人から人へと伝達するようなイメージを基にしています。想いが人に流れ込む様子を感じられるような、そんな音作りを目指して作っています。

09 シグモイド / theta

 シグモイドってそもそも何?とタイトルを聞いたときに思ったのですが、その辺りはKaritaさんが解説してくださる(はず)と思うので、純粋に曲の感想を書きます。
 ロックよりで、全体的に力強さを感じます。こういう曲は私はあまり書かないので非常に新鮮です。このアルバムの中では非常に素直?な曲で、聴いててほっとできる希少な曲だと思います。

10 nullus / nayuta:沙羅

 孤独の残骸に引き続き、このトラックでもマイマイさんにドラムのプログラミングをお願いしました。また、沙羅さんもコーラスで参加して頂いてたり、飛鳥硝子さんにギターで参加して頂いてたり、私の曲にしてはたくさんの人で作った曲になります。
 この曲はスワロウテイルを読了したときに、ピアノをぶらぶら弾いてたらさくっと構成ができました。私の場合、本を読んだ後に曲が出来ることが多いので、いつも本を読むようにしてイメージを絶やさないように心がけています。(もちろん、いろんな曲も聴くようにしているのですが)
 SF系のイメージで曲を作るときはなんとなくエレピを入れるのですが、この曲にも例に漏れずエレピの音を結構入れてたりします。後、フランジャー系の音色をかなり使っています。鋭さというか、あまりベタベタにはしたくなかったのでそうしたのですが、結果的に、珍しい質感になったような気がします。
 今回も前作と同様に特に許可は貰ってないのですが、AKIRAさんの解説を一部、載せさせていただきます(((
 【タイトル】
 nullus(ヌルス)
 -ラテン語で「無」を意味する言葉。
  作中のetmlで使われる<null>の言葉は「nullus」が由来。
  <null>は「何も示さない物」を表すのに使われる言語なので
  「nullus」も同じ様な「何も無い」みたいなイメージで付けてます。

 内容としては、「ハーモニー」に沿って書かれているので、興味がある方は是非読んでみてくださいね(販促2回目

11 Analoghack

 アナログハックとは、「人間のかたちをしたもの」に人間がさまざまな感情を持ってしまう性質を利用して、人間の意識に直接ハッキング(解析・改変)を仕掛けることです。 
 人間は、人間の〝かたち〟をしたものに反応する本能を持っています。たとえば〝笑顔〟を描いた絵や映像を見ることで幸福な気持ちになることができます。あるいは、警官の絵を描いただけの看板を見て、警戒心を呼び起こされて車のスピードをゆるめたりします。
 これは脳が持つ性質から、人間の意識が無意識にそう動くものです。
 ですが、この性質は、我々の感情や意識が、〝人間のかたち〟をつくことで接触可能な、悪用のおそれがあるセキュリティホールを持っているのだとも言えます。(アナログハック・オープンリソースより引用)

12 RERISE / 沙羅

 本アルバムの最後の曲になりますが、旅路の果てで、遂に主人公(少女)は大切なものと自身のレゾンデートルを見つけたというイメージです。
 オーケストラ編成で電子系のビートで組み立ててみました。最後の場面なので、やはり壮大にバーンといきたいなという思いがありました。沙羅さんの力強い歌声など、注目して聞いてもらえればなと思います。ぶっちゃけてしまうと、この曲は某アニメOPの影響を受けています(元ネタの原曲が判った方は感想のメールでも送ってください。特に何も出ませんが、なるべく早く返信するようにします!)
 最近、ゼーガペインというアニメを観たのですが(今更かよという突っ込みはなしで)、今回はそこから引用して終わりたいと思います。
「消されるな、この想い 忘れるな、我が痛み」

<あとがき>

 少しでも長い間聞いてもらえるような曲を作ろうと頑張ったのですが、今回は前作よりも更に良くなったような気がしていて、個人的に満足のいく作品となりました。前々作からずーんと、明るくは無いタイプのものが続いているので、次の作品はそこまで暗くなく、格好いい(ロックよりな)アニソン系のアルバムを作ろうかと画策しています。

 最後になりますが、関係者の方々、作品を聴いてくださった方々、本当にありがとうございました。今後も引き続き、記憶に残る良い音楽を作るために頑張っていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、また、次の作品で!

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